Fiction( フィクション)の定義は、「架空の出来事を想像的に描いた物語」とのことですが、ここでひとつの物語を思い付いたので記述いたします。
よしおの旅
『よしおは、真面目だけが取り柄の気の弱い青年です。小さなことにも気になる性分で幼少のころから神経性の下痢に悩まされておりました。平成17年、よしおが静岡県の中核都市に旅をしたときです。
薄暮の時間「さわやか」という名のハンバーグ屋の駐車場にバックで入れようとした際、隣に駐車してあったM社製ロードスターの右前方のバンパーに衝突し、相手車バンパーは破損しました。持ち主は車好きらしくイエローのボディーは綺麗に磨かれ高価なアルミホイールが装着され、持ち主の愛着が感じられるものでした。周りに人影はなく、一瞬このまま「当て逃げ」しようかと脳裏を横切りましたが、持ち前の神経性下痢が起こりそうな予感がし、ここは人間として正直に申し出ようと決意し、店内に入り店員と共に黄色いロードスターの持ち主を探しました。持ち主はすぐに現れました、30代の身なりの小ざっぱりした技術者風の男性で女性と共に食事をしている最中でした。
3人で共に外へ行き、破損状況を確認していただくと男性は「あぁっ」「ああッ」と呻き声を出すのみで、愛車が傷物になったショックの大きさが計り知れ、よしおは己の所業に深く首を垂れ、ひたすら謝り名刺を渡し、修理代はもとより希望することがあれば何なりと申してくださいと伝えました。
ショックいまだ冷めやらず崩れるようにしゃがみバンパーの亀裂部分を撫でる男性に、連れの女性は初めて口を開き「当て逃げする気なら出来たのに、正直に言ってくれて、丁寧に謝ってくれているのだから許してあげましょうよ」。
持ち主と修理方法と費用について連絡先を交わし、よしおは救われた気持ちで現場をはなれました、神経性下痢は起きませんでした。』
その後請求された修理代は結構な金額でしたが、その後のトラブルは一切ありませんでした。20年前の旅の一コマとして、あのとき正直に申し出てよかったと思える今日この頃のよしおです。
