サヨちゃんとカモ

 遠い昭和のころのお話です。北海道のある田舎にサヨちゃんという小学生がおりました。サヨちゃんの家から小学校までは歩いて約30分かかります、毎日歩いて通っていました。学校までの道は砂利道です。道の横にはきれいな小川が流れていました。
 5月のある日の帰り道、小川のよどみに水面を泳ぐ一羽の、頭が緑色で白い首輪のあるカモの姿を見かけました。そのうちサヨちゃんが学校帰り、その道の同じ場所からそのカモが現れるようになり、サヨちゃんは給食のコッペパンを少し残してカモにあげてみると、おそるおそるついばみ始め、やがてよろこんで食べるようになりました。お父さんにそれを話すとそのカモはマガモの雄で「青首」ともいうんだと教えてくれました。
 サヨちゃんはカモに「アオ」と名前をつけて毎日パンをあげていると、いつしかアオはサヨちゃんの手からパンをつまむようになってすっかり仲良しになりました。
 7月のある日の土曜日、このことを近所に住むおじさんにお話しすると、おじさんはやさしく微笑んでアオが出てくる場所を教えてといいました。サヨちゃんはその場所をおじさんに教えました。
 月曜日の学校からの帰り道、いつものようにアオは姿を現しません、きっと明日はアオに会える、そう思いながら帰りましたが次の日もまたその次の日もアオが出てくることはありませんでした。アオはどこかへ行ってしまったのだと、サヨちゃんはさみしさをこらえながらもあきらめるより他ありません、そしてパンを残すのをやめました。
 アオのことを忘れかけていた10月の落ち葉のころ、サヨちゃんはお母さんから近所のおじさんの家に届け物してとお使いを頼まれました。サヨちゃんは包みを手にしておじさんの家に行き玄関の戸を開け、くつ箱の上に置かれていたもの、
それは真新しいマガモのはく製でした。