燕は来ず。

 先般、会派の行政視察で和歌山県串本町に行きました。視察項目は地震・津波防災対策についてです。当地は本州最南端の太平洋沿岸に位置し、南海トラフ巨大地震が発生すると最短で約2分で1mの第1波が襲来し、その後最大波高18mの津波が押し寄せるというもので、全国で一番早く津波が到達する町です。
南海トラフを震源とする地震・津波が起こる確率は今後30年で70~80%と予測されており、そのような現実的な危機感もあり役場庁舎をはじめとする町の中枢となる機関は平成27年頃より順次高台への移設を進めておりました。
 政府の地震調査委員会は「北海道東部に大津波をもたらす巨大地震の発生が切迫している可能性が高い」としており、北海道太平洋沿岸で、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震が発生すると登別市の場合、津波第1波到達は発災後約40分とされており、串本町よりは時間的余裕はあるものの、日本海溝モデルで13m、千島海溝モデルでも5mと、居住地区がある低海抜の平野部のほとんどが津波に飲み込まれ、甚大な被害となることが想定されています。
 登別市の平野部はJR線によって南北に分断されており、地区によってはJR線沿いに幅1m以上のコンクリート製の深い側溝が縦走してその脇には鉄柵が張り巡らされ、成年男子でも容易に乗り越えられるものではなく、これが津波避難の大きな障害となっています、当該地区の現状に対する行政の認識もどこか他人ごとで、どうにも住民の避難に対する真剣さが今ひとつ感じられません。
 そういえば、ほぼ毎日「ハイリスク地」とされる、深い渓谷に架かる橋のパトロールを実施しておりますが、毎年4月から6月にかけて橋桁に営巣した燕が無数に乱舞し、「飛燕」とは正にこのことか、という様相を呈するのですが、本年令和5年(2023)はどうしたことかついに燕は一羽も現れませんでした。その理由は定かではありませんが、古来より言い伝えられているような「大災害の前兆」であるのかどうかは「神のみぞ知る」ことなのでしょう。