不法投棄を続ける者の特定、その2

 不法投棄されたゴミの中にある無数の紙くずとなったハガキ類を貼り合わせ、個人を特定する作業を始めた私でしたが、夜半過ぎに全くもって不毛な作業を進めるうち、あることに気づきました。全てを復元する必要はありません、住所、氏名さえ分かればよいのです。ジグソーパズルを作るときの経験と同じで、同じような色合い、紙質を分別し、必要な部位だけつなぎ合わせることにいたしました、その結果作業は各段に早まり、不法投棄している個人名と住所が浮かび上がってきました。
驚くべきことにその人物は小中学校時代の同級生でした。住所も私の記憶している場所と完全に一致しています。その人物をIとします。
 クラスは違いましたが私の知っているIは比較的優秀な生徒でした。弁論大会では「父は偉大である」との内容で爽やかな弁舌で聴衆を唸らせたり、英語のリーディング、発音は絶品でクラス全員が聞きほれたといいます。

 そんな彼でしたが、中学校3年時の修学旅行の時です。旅行先の旅館で夜、私は違うクラスの仲の良い生徒たちの部屋に遊びにいきました。引き戸を開けると500mlの1缶のビールを開け4~5人で回し飲みをしているところでした、私もお相伴に預かり一口をグッと飲み干しました。中学生のやることですから、缶ビールが無くなればそれで終わりです。その中にIはいました。彼は決してビールを飲もうとせず、先生には言わないでくれよとの我々の懇願に対し、わかったと返答しました。
 就学旅行も終わり、数日経ったある日のこと、午前中の数学の授業が終わったあと、石井先生に呼ばれました。石井先生はIの担任です。「若木お前、修学旅行の時、ビールを飲んだだろう」と詰問され、私はそれを認めました。
 ビールを飲んだ我々は放課後に呼ばれ説教を受けました。後日、教師に情報をリークしたのはIとわかりました。高校受験を前に自分の内申点を上げるために密告したのだ等の憶測が流れましたが、真意はわかりません。その日以降、Iへの印象は当然いいものではなくなりました。
 その後の高校受験でIは管内屈指の進学校を受験しましたが残念ながら不合格となったとの事です。私とはクラスも違い交友関係もなかったことから彼の記憶はここで終わっています。

 優秀な生徒であったろうIが就労もせず引きこもり、深夜不法投棄を繰り返す輩になったのか、彼に人生に何があったのかはわかりません。不法投棄に関して今後警告はしますが改心せずそのような行動が続くのであれば待っているのは社会的制裁でしょう。