全国に数か所、鹿の名の付く温泉地があります。栃木県那須町「鹿の湯」や長野県上田市「鹿教湯」(かけゆ)が有名です。その名の由来はほぼ共通しており、要約すると、昔 猟師が手負いの鹿を追いかけると、鹿は山奥の湧き出る湯壺につかり傷を癒した、その姿をみて「鹿の湯」と名付けられたと伝えられております。
北海道にも何か所か「鹿の湯」名の温泉がありますが、上記の由来であるのかは不明です。アイヌ民族はトリカブトを塗布した毒矢や仕掛け罠で狩猟していましたので、獲物を追って山中深く分け入ることは多くはなかったのかも知れません。
樹木の話になりますが、イチイという木があります。北海道ではオンコと呼ばれ、庭木や垣根として道内で至る所で普通にみられる樹木です。近年大繁殖しているエゾシカですが、冬になると、この木の葉を好んで食べます。山間部に入りますと、首の届く高さのオンコは食い荒らされて丸坊主となっている枝を目にします。もちろん他の植物も摂取しているでしょうが、冬はオンコによく似ている近縁種のキャラボク等には見向きもせず、「大好物」であるこの木の葉を真っ先に食べていることは間違いなさそうです。
この木や種に含まれるタキシンという物質は毒性があり、心臓毒の一種として循環器系に強い作用を及ぼすとのことです。知人の祖母はオンコの実を焼酎に漬け「心臓に効く」と称し日々少量摂取しているとのことでした。
毒も薬も表裏一体で、良薬も使い方次第で毒薬となります。シカが冬になるとなぜ、この木のアルカロイド系毒成分を摂取するのか調べてみる価値はありそうです。
鹿の教え