蒙昧な王様

 数年前、豊かで強い「雨の国」に土地成金の男が王様になりました。この男は財はありますが知性と教養は人並み以下で、有能な家来達は去り、回りには何でも言うことを聞く御用聞き達だけが残りました。
 男が王様になってからは、その強大な権力を手にして、「この世をば我が世とぞ思う望月の」ごとく好き勝手し放題、思い付きの派手な演出や、自分の国が良ければそれでよく他の国はどうなってもお構いなしの横暴な振る舞いと、またこの男を選び出したこの国の民、約半数はこの男同様に蒙昧の民であることが、他の国に知れ渡り、「雨の国」は同盟を結んでいた国々からの信用は大きく失墜しました。
 新たな王様を選ぶ際にも、男はあらぬ言いがかりをつけ自らの負けを頑なに認めず、自らの信徒を煽り、政を司る館を占拠させた挙句、その後手のひらを返すように、あれは信徒が勝手に暴れただけで自分は無関係だ等と言い出す始末で、どこまでもお粗末な王様でした。
 一度手にした世界一の権力に強い執着心はあるようですが、残念ながら王の座を剥奪され元の成金男に陥落する日も間近です。男が去った後にはこの国の歴史上消し難い記憶だけが残るだけでしょうが、その荒廃の爪痕と信用回復には長い時間が必要であると思われます。

 余談ですが

 男が王様の座に就いた時、遠い島国から、誰よりも真っ先に祝辞と忠義の意を伝えに馳せ参じた忠犬ポチのような国があったとのことです。