新市役所を津波浸水予測区域内に建設して本当によいのか

 津波や洪水により水没の危険性のある地域に、登別市は新しい市役所本庁舎を建て替えようという計画をしています。平成29年度の建設基本構想を経て建設基本計画に移行しました。
 市側は多くの市民の意見を聴いたといっておりますが、重要なことが一部の団体の意見の聴取により決められつつあるのではないか、建て替えの議論がされていることすら知らない市民も大勢いるのではないか、決して広いとは言えないこの場所でよいのか、特に場所はこのような決め方で果たしてよいのだろうかといった疑念が常にありました。現在位置はたった海抜3.5mしかないのです。
 そのさなかに内閣府から最新の情報が出され、従来の予測を超える津波の波高が発表されました。
 海岸線から現市役所までは直線距離にして、約350mの内陸部にあり、海抜は前述のとおり3.5m、この低さは水害時の行政遂行においては致命的であるといえます。JR駅、バス停から近い等すべてのアドバンテージを帳消しにするものです。
 内閣府の想定では最大クラスの津波が来た場合、現在の場所では5.8m水没します。3.11以降多くの日本人が映像などで知っているとおり、津波は時速約30㎞/h以上の速さで押し寄せます、市役所1階、2階付近にあるすべてのものが流失もしくは瓦礫化します。今回のこの内閣府の発表はある意味僥倖ではないかと考えます。従来の防災対策を抜本から見直さなくてはならないからです。
 市役所本庁舎は防災拠点として、また行政の中枢であることを考えれば、24時間、365日水没しない地点になくてはなりません。地震・津波が来たからといって、職員が業務を放棄して、来庁している市民を置き去りにして逃げ出すことは考えにくく、現在の場所では、重要書類、各種データ、機器を階上に上げる等の作業により、多くの職員が逃げ遅れ犠牲となることも予想されます。
 高台への建設は自転車、徒歩で来るには不便になる等の意見も一部にはあるようですが、これらの意見は市役所近隣に住む住民の意見でしかなく、登別市の主要3地区(鷲別、幌別、登別)のうち、幌別以外2地区のほとんどの市民は自動車等で、狭い駐車場しかない現市役所に登庁しているのです。また高台といっても現在位置から約500m東側の海抜14mの場所に移動するだけの話であり、ここに移設した場合、長年の懸案事項である津波洪水等による水害の危惧から永劫的に解放されます。
 以上のことから多額の借金をし、建設後65年は使用しなくてはならない総工費約60億円もの有形の固定資産を容易に津波浸水区域内に建設するべきではありません。災害は復旧のほうが長い時間がかかることを忘れてはなりません。

 市役所は行政機能の本丸であり、防災の司令塔として水没の危険性のない高台に建設されてこそ、そのポテンシャルが発揮されるのであって、津波、洪水が引いた後、市役所職員の最初の仕事が泥だらけ床の中、汚水に浸かった事務用品を運び出す作業から始まるような場所は不適切と言わざるを得ず、計画は構想の段階まで遡り見直す必要があります。

市役所の場所については行政の根幹にかかわる問題であり、全市民を巻き込んだ徹底した議論がなされるべきです。