塩水を飲むもの

 N自動車の前会長が、巨額の役員報酬を隠し逮捕された事件は、ある種の衝撃をもって我々に迎えられました。数億単位の正規の役員報酬額とは別に、直近3年間で有価証券報告書に記載のなかった報酬が約40億円に上り、その他記載のない報酬は90億円を超えているとのことです。
才能と努力でその正当な地位と報酬を手にいれた人物は称賛されるべきものと考えます。報酬は努力勤勉の成果であり、それを目標とし努力する人もいることと思います。
 それとは別に、巨額の報酬を手にしても世界の大企業の役員や富裕層の中にはそれでも少ないと思っている人もいるはずで、その心を満足させてくれることはないのかもしれません。これはその立場になってみなければわからない感覚でしょう。
 近所の寺院から「仏教経典」をいただいて、特に信心深い私ではありませんが、何気に読んでいるとさすがに含蓄深きことが書かれていました。
「煩悩」(ぼんのう)の項にこのような文があります。

「人間の欲にははてしがない。それはちょうど塩水を飲むものが、いっこうに渇きがとまらないのに似ている。彼はいつまでたっても満足することがなく、その渇きはますます強くなるばかりである。」「人はその欲を満足させようとするが、不満がつのっていらだつだけである。」

 それに対する解決の記述はありません。