議員になる前の話です。3月中旬頃、室蘭市高砂町方面に用があり、午後国道36号線、栄町3丁目付近を走行していると、いきなり男性が私の車の前に飛び出してきました。一瞬警察のレーダー取り締まりかと肝を冷やしましたが、一般の男性のようです、手を挙げて何か言っているので路肩に停車し用件を聞きました。「お願いだけど東室蘭の駅の近くまで乗っけてってくれないかい?」この強引なヒッチハイクに私は一瞬たじろぎました。
行き先が違うので私は「申し訳ないけど」と言い、一度は断りましたが男性は「そこを何とか」と食い下がります。仕方がないので乗せることにしました。
私も壮年ですが運転しながらこの男性に「おじさん、名前は何ていうの?年齢は」と聞きますと「〇〇ってんだ」と名乗り年齢は50代後半で、着ている黒っぽいジャンパーは若干くたびれています、「この辺りに何か用事があったの?」と尋ねると午前中は富岸川河口付近にあるパチンコ店にて遊戯し、その帰りであるとのことでした。
「行きはどうやって行ったの」「バスで行った」、「じゃ帰りもバスで帰ればいいんでないの?」「バス代がない・・・・・」
帰りのバス代をも掛けた大勝負にも負け、徒歩で自宅まで戻る途中であったようです、当時私はスクラップ寸前のジムニーに乗っていましたので、歩き疲れた〇〇さんの目には、比較的声を掛けやすかったのかもしれません。
仕事は何をしているのかを聞くと「今はしていない、生活保護を受けてんだ」との答えでした。
生活保護制度は、いうまでもなく、「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」という日本国憲法第25条に基づいて設けられた制度です。思いがけない病気やけが・高齢などで働けなくなったり、働いていても収入が少なかったりして、どうしても日々の生活に困っているときに、一日でも早く元の生活に戻れるように手助けをするのが生活保護の趣旨です。
本当に生活扶助を必要とする世帯に支給することは当然のことですが、一部の人は、支給目的以外の用途に使っている話はよく耳にしていましたが、私自身実際目にするのは初めてでした。いずれは何等かの形で実態調査等を行い、その結果を踏まえ、領収証やレシート等の使用履歴の提出が必要になってくるのではないかと感じました。
〇〇さんは「3日後に金(生活扶助費)が入るまで500円しかない、モヤシを食べて過ごすしかない」と独語を反復します。お金を少しばかり工面してほしい意図が見え隠れしていますが、私は「誰が悪い訳でもないよね」と言うと「そうだ、自分が悪いんだ」と言って〇〇さんの独語は収まりました。
車は目的地に到着しました、3日間を500円で過ごすという真偽は分かりませんが、本当なら気の毒な話なので、これも何かの縁と思い千円ほど渡すことにしました。
〇〇さんは至極感激した様子で「ありがとうございます、この御恩は決して忘れません、せめてお名前だけでも」等と、時代劇的な定型語句を言いました。
私は答えました、
「名を名乗る程の者ではござりませぬ」。