北大等合同研究グループの調査によると、北海道太平洋沿岸の河川に遡上するシラスウナギ(二ホンウナギの稚魚)の数が10年前の約20倍に増加しているとの研究結果が発表されました。逆に九州、四国周辺は減少傾向にあり、シラスウナギの到達域が全体的に北上している傾向にあるようです。生息域の変化はウナギに限ったものではなく、シシャモは鵡川が有名でしたが、遡上数が激減し現在は資源回復のため令和5年から休漁となりました。
北海道を代表する魚種として鮭鱒類(主に秋サケ)の漁獲量長期累計によると、平成15年の28万7,018トンをピークに減少の一途を辿り令和4年は9万1,172トンにまで減少し現在も最低記録を更新し続けています。ブリ、サメ、フグ等の増加はいうまでもなく、漁業に従事する人々には、これら魚種変更という現状は避けては通られない現実であり、各自治体の漁業関係者は従来の漁獲魚種に固執するか、変化していく状況に柔軟に対応するか、何らかの養殖事業に踏み切るか、それらを上手く複合させるかを選択する時が近づいていると思われます。
養殖についてはかつて道水産試験場に取材を行ったことがあり、基本事項として「誰が、何を、どこで、どこに、どのように売るか」これを最初に明確にしておかないと失敗する、まずは実証実験等で採算性と課題を抽出するのが賢明であるとの助言をいただきました。
現在「活の鰻」の多くは天然のシラスウナギを河口付近で捕獲し養鰻池にて蓄養したものが出荷されております。浜松勤務時代に清浄な湧水と生餌で育成された本場の鰻の味、特に白焼きの滋旨を知った私は「ハレの日」には鰻料理を心行くまで堪能しておりましたが道内に鰻屋は多くはありません。道内では美唄で民間事業者が「雪うなぎ」として商品化しており、鹿部、神恵内も事業化に乗り出そうとしています。
今後シラスウナギの回遊増加が続けば将来的に道内における養鰻事業の確立と道産鰻として市場的優位性に繋がることも期待できそうです。
ウナギの完全養殖については研究所レベルでは成功しているものの、商業ベースとしてはまだまだクリアしなければならない課題もあり、完全養殖ウナギが食卓に上る日はまだ先と思われます。いずれ我が国の研究者や事業者のたゆまぬ努力によって、それが成し遂げられる日が訪れることを信じております。
道産鰻